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ゴールデン・バットじけん

ゴールデン・バット事件

海野 十三

「新青年」1933(昭和8)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,946 字 · 46 页

青空文庫

「それが例の短刀をもった男じゃないのかネ」

「そうかも知れない。そうかも知れないが、何しろバットの上につけられた靴の跡のことだ。小さい面積のことだから、ハッキリどんな形の、どんな寸法の靴だとまでは云えないのだ」

「なるほど」

「そこで僕は、君に一つ質問があるが」と帆村はまた一本のホープに火を点けて云ったのである。「事件の最初、君がアパートの裏口へ廻ったときに、露地に何か人影のようなものを見懸けたといったが、あれは男だったか、それとも女だったか、解らなかったかネ」

「さあ、どっちとも解らないネ」

「解らない。解らなければ、それでもいいとして、僕はあの部屋に事件の前後に居たものと思われるもう一人の人物を知っているのだ」

「それは誰のことだい」

「それは女である。しかも若い女である」と帆村は仰々しく云った。

「どうしてそれが判ったのかい」

「それはベッドの上に枕があったが、探してみるとベッドの下にもう一つの枕が転げていて、これには婦人の毛髪がついていた。それだけではない。卓子の上に半開きになったコンパクトが発見された。白い粉がその卓子の上に滾れていた。粉の形と、コンパクトをどけてみた跡の形とから、コンパクトの主があれを卓子の上に置いたのは、相当生々しい時間の出来ごとだと推定される。