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ゴールデン・バットじけん

ゴールデン・バット事件

海野 十三

「新青年」1933(昭和8)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,946 字 · 46 页

青空文庫

彼は例の事件について、外国汽船の出入はげしい港で何事かを調べていたというわけなのだろう。

「ときに君は、近頃ゴールデン・バットへ行っているかい」

「行ってはいるがネ」

「行ってはいるがネというところでは、あまり成功していないようだネ。あすこも金だの海原氏が一時に行かなくなって、寂しくなったことだろう」

「その代り大した後任者が詰めかけているよ」

「そりゃ誰のことだい」

「君には解っているのだろう。あの丘田医師のことさ」

「そうか。丘田氏が行っているか。相手はどの女だい」

「それが例のチェリーなんだ。チェリーはこの頃、断然ナンバー・ワンだよ。君江も居るには居るが昔日の俤無しさ。しかし温和しくなった。温和しいといえば、あの事件からこっち、不思議に誰も彼もが温和しくなったぞ。あれから思うと金という男は、悪魔のようなところのある素晴らしい天才だったんだナ」

「煙草の方は相変らず皆でやっているかい」

「煙草というと……」と私はあまり唐突なので直ぐには気がつかなかった。「ああ煙草のことかい。それならカフェ・ゴールデン・バットのことだ。看板どおりのものを忠実に愛用しているさ。うまい宣伝手段もあったもんだネ。