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ゴールデン・バットじけん
ゴールデン・バット事件
海野 十三
「新青年」1933(昭和8)年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,946 字 · 46 页
そういえば近来、女ども、バットをてんでにケースに入れていてネ、それを揃いも揃ってパイプに挿んでプカプカふかすのだ。他にはちょっと見られない風景だネ」
「ふーん、なるほど」そこで帆村は言葉を切って、彼の好きなホープを矢鱈にふかし始めた。
「じゃ一つ――」とやがて彼は立ち上って云った。「今晩は久しぶりにバットへ一緒に連れていって貰うとして、その前に君にちょっと附き合ってもらいたいところがあるんだが」
そこで私は帆村について家を出掛けたのだった。
「最初はここだよ」
と彼は云って、バットの近所にある野間薬局の店先にずかずか入っていった。
「ちょっと劇薬売買簿を見せて貰いたいのですがネ。ここに本庁からの命令書がありますが……」
そういって帆村は店先に腰を下した。顔の青白い主人が奥から出てきて、こっちを向いて叮嚀に挨拶をすると、薬瓶の沢山並んだ部屋から、大きな帳簿をもって来た。帆村がそれを開いたのを見ると、細い罫線が沢山引いてあって、そこに細い数字が書き込んであった。
そこで彼は、丘田医師の欄を拡げて、古い日附のところから、その細い売買数量を丹念に別紙へ筆写しはじめた。