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ジャーナリズムざっかん

ジャーナリズム雑感

寺田 寅彦

「中央公論」1934(昭和9)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,682 字 · 21 页

青空文庫

毎日繰り返される三原山型の記事にはとうの昔にかびがはえているが、たまに眼をさらす古典には千年を経ても常に新しいニュースを読者に提供するようなあるものがあるような気もする。きのうのうそはきょうはもう死んで腐っている。それよりは百年前の真のほうがいつも新しく生きて動いているのである。

スコットランドの湖水に怪物が現われたというのでえらい評判であった。しかし現代のジャーナリズムは、まだまだ恐ろしいいろいろの怪物を毎朝毎夕製造しては都大路から津々浦々に横行させているのである。そうして、それらの怪物よりもいっそう恐ろしくもまた興味の深い不思議な怪物はジャーナリズムの現象そのものであるかもしれない。

しかし、象牙の塔のガラス窓の中から仮想ディノソーラス「ジャーナリズム」の怪奇な姿をこわごわ観察している偏屈な老学究の滑稽なる風貌が、さくら音頭の銀座から遠望した本職のジャーナリストの目にいかに映じるかは賢明なる読者の想像に任せるほかはないのである。

(昭和九年四月、中央公論)