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ジロリのおんな

ジロリの女

坂口 安吾

前半「文藝春秋 第二六巻第四号」1948(昭和23)年4月1日、後半「別冊文藝春秋 第六輯」1948(昭和23)年4月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 51,597 字 · 102 页

青空文庫

映画を見たり、本を買ったり、靴の一足ぐらいは買えるでしょう。いくらかなりとあなたの人生のお役にたてば、差上げる私の方の満足というものですよ。あなたが妙にカングルと、そのために人生がキュークツになる。万事気軽に受けいれると、万事が気軽に終始する、人生はそんなものです」

ヤス子は分りましたと受取ってくれたが、そこで私が一夕晩メシに招待して、例の紙の横流しなどザックバランに社のヤミ性をうちあけて、

「かく申さばお分りの通り、私はしがないヤミ屋の一人、たゞ金銭を追いまわしている奴隷ですが、金銭万能というわけではありませんよ。金銭によって真実幸福をもとめうるかどうか、これは問題のあるところですが、金銭をこゝろみずにハナから金銭を軽蔑したり金銭に絶望したりすることは私はとりません。まず金銭をこゝろみて、それによって真の幸福の買えないことに絶望して、精神上の幸福をもとめる、これなら順が立っていますよ。万事こうこなくちゃ、空論だけの人生観は私は信用しないタテマエなんです」

ヤス子は人生探求というタテマエだから、悪徳に対しては一応甚だ寛大で、あるがまゝ全てを一応うけいれて、という心構えであった。