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ジロリのおんな

ジロリの女

坂口 安吾

前半「文藝春秋 第二六巻第四号」1948(昭和23)年4月1日、後半「別冊文藝春秋 第六輯」1948(昭和23)年4月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 51,597 字 · 102 页

青空文庫

「ヤス子さん。あなたを高めるといったって、事実、私は全部のものを今こゝへさらけ出しているのですよ。手練手管のある人間でもなく、頭のヒキダシの中に学問をつめこんでおく男でもありません。まったく、これだけの人間です。先程も申しました通り、つまり、恋と愛人とに奉仕する、すべてを賭けて奉仕のマゴコロを致すというだけの人間なんです。それが私の身上です。イノチなのです。それが人を、高めるのか、低めるのか、それは私は知りません。たゞ、人を傷つけないことは確かです。そして高めるかどうか、その答が、実際にためしてみた後でなくて、いったい、現れてくるものでしょうか。私は私のすべてのものに賭けて、ひたすら、あなたに奉仕のマゴコロを致したいのです。ためして下さい。そして、それが意にみたぬものであったら、もともと私は下僕です、すて去り、突き放して下さればよろしいのです。あなたへの奉仕と尊敬は、その切なさにも堪えねばならぬと命じるのですよ」

ヤス子は答えない。

「ためして下さい。私の切なる希いをきゝとゞけて下さい。さもないと、死にます。いゝえ、ほんとですとも。この場で、今すぐにも、アッサリと、自殺します。