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ソヴェトのしばい

ソヴェトの芝居

宮本 百合子

「改造」1931(昭和6)年3、4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 26,289 字 · 53 页

青空文庫

全三幕を通じて最もバレーらしくない部分なのだ。踊る物売りなんぞ一人もいない。卵の入った籠を抱えた婆さんや新聞売子が、ドタバタと、大きな第一オペラ舞踊劇場の舞台の右から左へ埃を立てて駈けこむだけ。地で行っている。それで思わず笑う。――

ここでは現在及未来の新鮮なソヴェト社会生活を直感させるようなバレーの技術も欠けている。フットボーリストも箒をもった若々しい婦人労働者も、踊りかたは全く古典的なバレーの方法で、アンナ・パブロ※(濁点付き片仮名「ワ」、1-7-82)の弟子だ。コムソモールカが昔のバレーの白鳥のようにやっぱりああいう風に爪立って、チョチョチョチョと歩いて、キュッと片脚をのばしている。

服装だけのコムソモーレツとコムソモールカとが、超現実的に追いつ追われつ、爪先踊りをやって、メデタシ、メデタシになって、最後の五ヵ年計画バレー化に到っては、問題の外だ。

五ヵ年計画を表徴するものが何だと思う? 変てこなヴェールをかぶった五人の女だ。その五人の女が、全然古風な、運命のつかわしめみたいな踊りをクネクネ踊っていると、舞台の奥へ、耕作用トラクターと数人の踊り子が出て来る。