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チャンス

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太宰 治

「芸術」1946(昭和21)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,361 字 · 17 页

青空文庫

一方、女どもの言い争いは、いつまでもごたごた続いている。

私は立上って、帰ると言った。

お篠は、送ると言った、私たちは、どやどやと玄関に出た。あ、ちょっと、と言って、私は飛鳥の如く奥の部屋に引返し、ぎょろりと凄くあたりを見廻し、矢庭にお膳の寒雀二羽を掴んでふところにねじ込み、それからゆっくり玄関へ出て行って、

「わすれもの。」と嗄れた声で嘘を言った。

お篠はお高祖頭巾をかぶって、おとなしく私の後について来た。私は早く下宿へ行って、ゆっくり二羽の寒雀を食べたいとそればかり思っていた。二人は雪路を歩きながら、格別なんの会話も無い。

下宿の門はしまっていた。

「ああ、いけない。しめだしを食っちゃった。」

その家の御主人は厳格なひとで、私の帰宅のおそすぎる時には、こらしめの意味で門をしめてしまうのである。

「いいわよ。」とお篠は落ちついて、「知ってる旅館がありますから。」

引返して、そのお篠の知っている旅館に案内してもらった。かなり上等の宿屋である。お篠は戸を叩いて番頭を起し、私の事をたのんだ。

「さようなら。どうも、ありがとう。」と私は言った。

「さようなら。