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トコヨゴヨミ
トコヨゴヨミ
田山 花袋
「早稲田文学」1914(大正3)年3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,449 字 · 38 页
まア、金をためて国に帰って好い田地でも買って、年を取ってから、楽をするんだねえ。」などという人もあった。かと思うと、荒蕪地をある程度まで耕して、それを後から来た者に売って、もっと交通の便な、開けた町に近いところへ出て行こうとしている人などもあった。森だの藪地だのからは、大きな伐木を焼く煙が高く高く挙っているのを勇吉は見た。
雑嚢に一杯薬を入れると、二貫目位の重量があった。それが段々一日増しに軽くなって行った。勇吉はそれを楽みにして歩いた。
兎に角それだけ売り上げれば、かれはいつも家の方へ引返して来ることにきめていた。しかしそれが十里行って売切れるか、二十里行って売り切れるかわからなかった。一度は三十里近くも行って、それでも売り切れずに山を越して海岸に出て、そして漸く帰って来たことなどもあった。旅舎のない村では、頼んで漸く泊めて貰った。
二
ある夜、勇吉は荒れた小さな駅に来て泊った。そこはある街道からある街道へ通ずるような処で、旅客が馬を次ぐ宿駅になっていた。広い路に添って、人家が十二三軒あった。明るい灯のついた三味線の音のする料理屋などもあった。