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トコヨゴヨミ

トコヨゴヨミ

田山 花袋

「早稲田文学」1914(大正3)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,449 字 · 38 页

青空文庫

すべてがかれの思うように行った。かれは使用法を箇条書きにして書いて見たりした。

「旨い、旨い。これで出来た。」

かれは喜ばしそうな顔をして言った。

「何ツていう名をつけようか。」続いてかれはこう思った。万代暦、何うも固すぎると思った。新式万世暦、年代暦、こうも考えた。しかし何れもこれも皆な気に入らなかった。もう少し砕けて出て、ちょうほう暦、百年こよみなどという名をつけてみた。何うも矢張自分の思ったような好い名がなかった。

勇吉はその名の為めに尠くとも三日、四日考えた。ふとトコヨという字が頭に浮んで来た。トコヨゴヨミ――好い、好い、これが好いこれが好いと思って、嬉しそうに膳を叩いた。山田式トコヨゴヨミ――二、三度口でよんで見て、「矢張、式なんて言う字がない方が好い。ヤマダトコヨゴヨミ、それで好い、それで好い。」こう得意そうに言って、それを原稿の上のところに、ゴシックスタイルで丁寧に書いた。そしてその上に理学博士吉田卓爾先生証明と横に書いた。

「これで好い、これで好い。」

勇吉はある大きな事業をしたような心持ちで雀躍して狭い室の中を歩き廻った。

四

出京の準備は思の外手間取った。