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ぺんくらぶとげいじゅついん
ペンクラブと芸術院
正宗 白鳥
「新潮 第五十四巻第七号」新潮社、1957(昭和32)年7月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,444 字 · 9 页
会長の私に会計報告もしなかったのだ。私は、あの頃ペンクラブの会長になっていた夢を見ていたので、実際は会長でも何でもなかったのか。それで、念のために、昔話の相手になっている彼に、「僕はあの時、ペンクラブの会長であったのでしょう?」と訊くと、「そうでした」と彼は確答した。
私は俳句も和歌も作れず、満足に字を書くすべも知らないので、原則として色紙短冊は書かない事にしている。少くも展覧会などに出して公衆の目に触れることは避けていた。ところが、今度は珍しく数枚をよたよたと震える手で書き汚した。芸術院会館建設費として、文学方面の会員一同が、色紙短冊の揮毫をすることになったので、私も当然の義務として涙を呑んで筆を執ったのである。
無論自作の和歌俳句、或は詩文などは書く気はしない。何かと考えた果てに、先ず、「明日の事を思い煩う勿れ、一日の苦労は一日にて足れり」という、キリストの聖句を書いた。私は幼い頃から小心にして、明日の事に思悩む癖を持っている。原子爆弾だか水素爆弾だか、悪魔の発明にかかるものが、人類虐殺のために、明日の日にも落ちて来ないかと、漠然ながら今気遣っているのである。