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ぺんくらぶとげいじゅついん

ペンクラブと芸術院

正宗 白鳥

「新潮 第五十四巻第七号」新潮社、1957(昭和32)年7月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,444 字 · 9 页

青空文庫

なんて云うお座成りの儀礼もなしに、私の申出は直ぐに取入れられ、志賀直哉君が新会長に推薦されたのであった。会長として私の無能振りは会員にはよく分っていたのだ。しかし、眼光紙背に徹しない人々には、無能の用は看破されなかったのである。戦争末期のあの時分、微々たる清節を保った団体や会合が、どれほどあったであろうか。

会長の免職のし放しでは多少気の毒だと思ったのか、私は名誉会長という称号を与えられることになった。

ペンクラブの思出はこれで終り。

ここまで書いたあと筆を擱いて、ある会に出席したのであったが、そこの会員の一人は、昔ペンクラブで事務を取っていたと云うので、私の方からいろいろ当時の事情を訊ねた。すると、彼は、藤村死後にでも、大倉が、会の維持費として、数万円の寄附をしていたことを話した。必要に応じてもっと出してもいいと云っていたそうだ。会長の私は今度はじめて聞いたので、その時は何も知らなかった。会長として維持費の有無も、多額な寄附をしていた人のあったことも、全く知らなかったのは、不思議千万である。詰り、会の事務に当っていた人達が、会長たる私をそれほどに無視していたのであった。