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ボロやのしゅんじゅう
ボロ家の春秋
梅崎 春生
梅崎春生『ボロ家の春秋』。同一底本的分册已合并为一书。收入:ボロ家の春秋、Sの背中、黄色い日日、記憶、蜆、庭の眺め、凡人凡語。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 129,411 字 · 263 页
猿沢夫妻はちょっと顔を見合わせました。しかし蟹江がぱちぱちと駒を並べ始めたものですから、猿沢もやおら体を動かして、蟹江に向き合いました。
「さて、いくら賭けるかな」
決心をつけたと見えて、猿沢がそう言いました。いどむような声でした。
「そうさねえ。金を賭けるのも、もう倦きたねえ」と蟹江は並べ終ってじろりと猿沢の顔を見ました。「今夜はなにか変ったものでも賭けようか」
「変ったものって、何だね?」
「たとえばだね」蟹江はちょっと考え込むふりをしながら、やがてぽつんと言いました。「負けた方が裸になって見せる、なんていうのはどうだろうね」
「裸?」猿沢はにやりと笑いました。とたんに蟹江の裸の恰好でも想像したのでしょう。「そりゃ面白そうだね。それで踊るのかい?」
「いや、寒いから踊らなくてもいいだろう。そこらを一廻りするだけにしよう」
「お止しなさいよ。ばかばかしい」と猿沢夫人がきんきんした声でさえぎりました。「あんた方の裸を見たってぜんぜん面白くないわ。それよか、やはり一局二百円ということにしなさいよ」
「うん。それにしよう」
蟹江が口を開く前に、猿沢がそう言ってしまったものですから、蟹江は口をもごもごさせて、不承々々黙ってしまいました。