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ボロやのしゅんじゅう
ボロ家の春秋
梅崎 春生
梅崎春生『ボロ家の春秋』。同一底本的分册已合并为一书。收入:ボロ家の春秋、Sの背中、黄色い日日、記憶、蜆、庭の眺め、凡人凡語。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 129,411 字 · 263 页
「あそこはイヤだよ。食い物はまずいし、それにいるのは気違いばかりじゃないか。おれの肌に合わんよ。さあ、男を出せ!」
「男、男って、誰さ」
「うん。名前は知らんがちゃんと判ってるんだ。あんまり亭主を踏みつけた真似をするな。バカにしやがって。平和。おい。酒を買って来い。飲みながらとっちめてやる」
平和は売場に坐ったまま、石のように顔を硬直させて、返事をしなかった。
「大久保をついでに呼んで来い。あの野郎、おれをだまして、あんな病院に押し込みやがって、怪しからん奴だ」
大きな声でわめくものですから、近所のおかみさんが大急ぎで大久保を呼びに行った。大久保がかけつけると、ふしぎなことにはとたんに甚五はしゅんとして、おとなしくなってしまったのだそうです。看護人の姿でも連想したのでしょうか。もっとも正気の人間の心の動きでも、ぼくらは理解出来ないのですから、調子の狂ったものの動きなど判ろう筈はない。
で、その日は病院に電話をかけて、年配の看護婦みたいなのがやって来た。いろいろなだめられて、甚五は素直にその女に連行されて、病院に戻って行ったそうです。その時その女が言った。