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ボロやのしゅんじゅう

ボロ家の春秋

梅崎 春生

梅崎春生『ボロ家の春秋』。同一底本的分册已合并为一书。收入:ボロ家の春秋、Sの背中、黄色い日日、記憶、蜆、庭の眺め、凡人凡語。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 129,411 字 · 263 页

青空文庫

「なにも今のところ情報は入らないが、赤穂からまた逃げ出して、今は奄美大島かどこかに行っているらしい」

との答えでした。遠っ走りするにもこと欠いて、奄美大島とは驚きましたな。もし東京近辺にいるんだったら、僕が直接おもむいて不破に会い、権利書を譲渡して貰って、野呂の鼻をあかしてやろうかとも思っていたのですが、奄美大島じゃあ仕方がありません。そこで刑事にあいさつをして警察の玄関を出ると、そこでバッタリとあの固定資産税係の徴収員と会いました。

「やあ、こんにちは」と僕は人なつかしく呼びかけました。「どうですか、徴収の成績は?」

「どうもこうもありませんや」徴収員はハンカチを出して額の汗をふきました。「デフレでみんな参っちゃってるね。納付状態の悪いことったら」

「集めて廻るのも大変な仕事ですね。まあそこらでビールでも一杯やりますか」

そう誘ってみますと、その赤鼻の徴収員はまんざらでもないらしく、のこのこと僕について参りました。そこで僕はそこらの食堂に彼を案内し、席についてソラ豆とビールを注文しました。午後三時頃のことですから、食堂の客は僕らだけで、あとはがらんとしています。