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ヤミろんご

ヤミ論語

坂口 安吾

「世界日報 第五五二号~第六九二号」1948(昭和23)年2月23日~7月12日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,308 字 · 36 页

青空文庫

密室を高めなければダメなのである。

講談の世界

賭場を襲った強盗がある。十五万円と腕時計を六ツぐらいはぎとって、金モウケはこういうグアイにやるものだ、バクチなんてケチな金モウケをするな、と一場の訓辞をたれて引上げた。賭場の胴元は口惜しくてたまらず、涙をのんで訴えでて、バクチの方の御常連十四方は仲よくジュズツナギにならせられたという。泣きッ面に蜂であるが、自分たちがジュズツナギになることよりも、復讐の一念がより大きな願望であったとすれば、このへんの幸と不幸、満足と不満足、損とモウケ、心理を加味した如上の計算はまことに複雑をきわめ、正解をひきだす算式はたぶん発見できないだろう。

然し計算というものは精神の平衡状態において算出されるものであるが、賭場の一味には「口惜しまぎれに」という平衡を失した異常心理がはたらいており、だから益々計算の方途を失う。要するに、結果は、どんなにリュウインを下げてみても、後悔、つまり後悔ということは、計算法の出発点がまちがっていたという意味なのである。然し、それでも、訴えない方が利口であったという結論にはならない。