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ルルとミミ

ルルとミミ

とだ けん

「九州日報」1926(大正15)年3~4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,628 字 · 24 页

青空文庫

ミミは月の光りをたよりに花の鎖をふり返って見ました。いろいろの花をつないだ艸の糸は、湖のまわりを一まわりしてもまだ余るほどで、果は広い野原の艸にかくれて見えなくなっております。

ミミはこの花の鎖が湖の底まで達くかどうかわかりませんでした。

けれども、思い切ってその端をしっかりと握って、湖の中に沈んでゆきました。

湖の水が濁っているのは、ほんの上の方のすこしばかりでした。下の方はやはり水晶のように明るく透きとおって、キラキラと輝いておりました。

その中にゆらめく水艸の林の美しいこと……。ミミをふり返ってゆく魚の群の奇麗なこと……。

けれどもミミは、ただ兄さんのルルのことばかり考えて、なおも底深く沈んでゆきました。

そうすると、はるか底の方に湖の御殿が見え初めました。

湖の御殿は、ありとあらゆる貴い美しい石で出来ておりまして、真珠の屋根が林のようにいくらもいくらも並んでおりました。

ミミは、その一番外側の、一番大きな御門の処まで来ますと、花の鎖を放して中へ這入って行きました。そうして、もしや兄さまがそこいらにいらっしゃりはしまいかと、ソッと呼んで見ました。