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ウィタ・セクスアリス
ヰタ・セクスアリス
「昴」1909(明治42)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 58,941 字 · 119 页
家もお長屋の隣同志である。
僕のお父様はお邸に近い処に、小さい地面附の家を買って、少しばかりの畠にいろいろな物を作って楽んでおられる。田圃を隔てて引舟の通が見える。裔一がそこへ遊びに来るか、僕がお長屋へ往くか、大抵離れることはない。
裔一は平べったい顔の黄いろ味を帯びた、しんねりむっつりした少年で、漢学が好く出来る。菊池三渓を贔負にしている。僕は裔一に借りて、晴雪楼詩鈔を読む。本朝虞初新誌を読む。それから三渓のものが出るからというので、僕も浅草へ行って、花月新誌を買って来て読む。二人で詩を作って見る。漢文の小品を書いて見る。先ずそんな事をして遊ぶのである。
裔一は小さい道徳家である。埴生と話をするには、僕は遣り放しで、少しも自分を拘束するようなことは無かったのだが、裔一と何か話していて、少しでも野卑な詞、猥褻な詞などが出ようものなら、彼はむきになって怒るのである。彼の想像では、人は進士及第をして、先生のお嬢様か何かに思われて、それを正妻に迎えるまでは、色事などをしてはならないのである。それから天下に名の聞えた名士になれば、東坡なんぞのように、芸者にも大事にせられるだろう。