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ウィタ・セクスアリス

ヰタ・セクスアリス

森 鴎外

「昴」1909(明治42)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 58,941 字 · 119 页

青空文庫

そしてこの犠牲の候補者は過半軟派から出た。埴生なんぞのようなちびさえ一しょに退治られたのである。

逸見も退学した。しかしこれはつい昨今急激な軟化をして、着物の袖を長くし、袴の裾を長くし、天を指していた椶櫚のような髪の毛に香油を塗っていたのであった。

この頃僕に古賀と児島との二人の親友が出来た。

古賀は顴骨の張った、四角な、赭ら顔の大男である。安達という美少年に特別な保護を加えている処から、服装から何から、誰が見ても硬派中の鏘々たるものである。それが去年の秋頃から僕に近づくように努める。僕は例の短刀のを握らざることを得なかった。

然るに淘汰の跡で、寄宿舎の部屋割が極まって見ると、僕は古賀と同室になっていた。鰐口は顔に嘲弄の色を浮べて、こう云った。

「さあ。あんたあ古賀さあの処へ往って可哀がって貰いんされえか。あはははは」

例のとおりお父様の声色である。この男は少しも僕を保護してはくれなんだ。しかし僕は構わぬのが難有かった。彼の cynic な言語挙動は始終僕に不愉快を感ぜしめるが、とにかく彼も一種の奇峭な性格である。同級の詩人が彼に贈った詩の結句は、竹窓夜静にして韓非を読むというのであった。