轻松读懂日语经典作品
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ひとつのできごと
一つの出来事
宮本 百合子
「大観」1919(大正8)年11月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,024 字 · 23 页
が、この、今日のような天気! それは全く素晴らしい。私は嬉しまぎれに歌を唱いながら体を拭いたり髪を上げたりした。そして子供のような晴々した気分で下に御飯を食べに下りた。第一階目に私の食堂があるのである。
香りの好い珈琲(コーヒー)を啜(すす)りながら、私はいつか仕事のことを考えていた。おいしいトーストを食べながらもそのことを考えた。殆ど口では云い表わせない、あの集注した真剣な、緊張した気分に満たされながら、私はまるで頭のうちに浮んだ仕事を噛むで味うように御飯を食べ始めたのである。
ところが、もう少しでそれもお仕舞いになろうとしたとき、一箇処に凝集していた私の注意はふと妙な物音に、引きつけられた。
人の足音である。明かに大人の足音である。それがコトリ、コトリと忍びやかに上の部屋へ登って行く――。私は思わずオヤと云って立ち上った。なぜならば、この部屋の傍を通って行く階段は、私ほか使わないものなのである。私ほか使わないのだから、従って、私の部屋へ用事のある者以外に決してここを登って行くはずはないということになる。二階の人達の使うのは、それとは反対の側にちゃんと付いているのである。