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ひとつのあいじょう
一つの愛情
豊島 与志雄
「新小説」1949(昭和24)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,635 字 · 22 页
来年から……私は仕方なく、人をやとって五段ほど、でたらめに田を作ろうかと思います。そんなことが出来ても出来なくてもよい。じっといると息も出来ないほど淋しくなりますもの。
いろいろ下らぬことばかり申上げまして、私は先生の御不快なお思いを極度に恐れます。何卒私の愚劣さをおゆるし下さいませ。私はもうどのようなことになりましても致し方ございませぬ。私をどうかおさげすみ下さいませ。
吉岡先生様紀美子
御手紙有難うございました。
先生はお酒をあまり沢山おあがり遊ばさないで下さいませ。きっと御体に毒でございますもの。なんだか心配でたまりませぬ。
私は先生にお手紙が書きたくて書きたくて幾度も幾度も書きかけました。けれど、自分のことが恥かしくて、何にも申上げる勇気がなくて、せかれた水が渦を巻くように、胸がくるしく悶えておりました。
私は先生の御事を思い申上げている時が、一番うれしゅうございます。
あとは情けないことばかりでございます。
私の家は、六十坪余りあるのでございましょう。古くてみっともなくて、それを半分ほど使っておりました。すると、このあいだ地震があって、その使わぬところの屋根の瓦が、三百枚ほどすべって落ちました。