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ひとつのあいじょう
一つの愛情
豊島 与志雄
「新小説」1949(昭和24)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,635 字 · 22 页
それが恐ろしくて、私は何にもものが申上げられませぬ。
今はただただ、勿体ない、うれしい、幸福な思いに、胸が一杯で、夢の中をうっとりとさ迷っているような気がします。そしてなんだかもう、死んでもよいような気さえ致します。
何もかも考えることがわけもわからなく、泣きたいような切ない切ない気が致します。
今日は一日、じめじめと雨が降りました。もう日も暮れかけて、煙った山がまるで絵のようでございます。
「永遠の人」という御本を、昨日姫路へ行って探してみましたけれど、どこにもありませぬ。東京にございますなら、たいへんたいへん恐縮に存じますけれど、お求め下さいまして、お送り下さいませ。お願い申上げます。御本のお代を二百円お送り申上げます。けれど足りないかも知れませぬ。足りない分は後からすぐにお送り申上げます。
いろいろつまらぬことばかり申上げまして、どんなにか愚か者とお思い遊ばしましょう。失礼を何卒おゆるし下さいませ。
先生の御健康をお祈り申上げます。
吉岡先生様御許に葉山紀美子
御本をほんとにほんとに有難うございました。
私は十日ほど州本へ行っていて、昨日帰ってまいりました。