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いっすんぼうし

一寸法師

江戸川 乱歩

「東京朝日新聞」朝日新聞社、1926(大正15)年12月8日~1927(昭和2)年2月20日<br>「大阪朝日新聞」朝日新聞社、1926(大正15)年12月8日~1927(昭和2)年2月21日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 96,475 字 · 194 页

青空文庫

表通りを廻れば二三町もあるけれど、抜道からでは隣同志だ。ところが、養源寺といえば、いつか君が一寸法師の入るのを見た寺だ。ね、大体見当がつくだろう。これが彼奴の手品の種なんだよ」

「なる程背中合せに当りますね。ちっとも気がつかなんだ」

「だが彼奴の逃道はもう一つあるんだ。同じA町の養源寺の墓場の裏手に、これも背中合せだが、妙な人形師の店がある。あの不具者はここの家からも出入りしていたことが分った。つまり彼奴の住家は、三つの違った町に出入口を持っている訳だ。彼奴があれだけの悪事を働いて、今日まで秘密を保つことが出来たのは、全くこの出没自在な出入口のお蔭といってもいい」

「すると、あの寺の和尚や、その人形師なんかも仲間なんですね」

「無論そうだね。仲間以上かも知れない」明智は例の人をじらす様ないい方をした。「そこで、今日はその三方の入口から包囲攻撃をやる訳なんだ」

「では先だって山野の奥さんと一緒にO町の家へ入った男はだれです」紋三が尋ねた。「やっぱり仲間の一人でしょうか」

「その男は跛だったね」

「エエ、跛でした」

「じゃ、それがあの一寸法師なんだよ。顔に見覚えはなかったかい」