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いっすんぼうし
一寸法師
江戸川 乱歩
「東京朝日新聞」朝日新聞社、1926(大正15)年12月8日~1927(昭和2)年2月20日<br>「大阪朝日新聞」朝日新聞社、1926(大正15)年12月8日~1927(昭和2)年2月21日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 96,475 字 · 194 页
山野氏は適当な時機を見はからって、三千子の小松を家出させ、ここで蕗屋と落ち合うことにしました。三千子が山野氏の令嬢でなくて、小間使ということにして置けば、運転手と一緒になった所で、さして不体裁ではないのです。山野氏は、そんなことまで先から先へと考えていたのかも知れませんね」
そうして明智の説明が一段落つくと、三千子、蕗屋、安川国松の三人は、兎も角近所の原庭署へ連行されることになった。しおらしくすすり泣く三千子、青ざめた蕗屋、ブルブル震えている安川、一瞬間部屋の空気はうち湿って見えた。三人の刑事が、彼等をひっ立てる様にして、あとに随った。そして、彼等が今仕事場の入口を出ようとした時だった。
「三千子さん、一寸」
じっとキューピー人形を眺めていた明智が、ふと何かに気づいた調子で、三千子を呼び止めた。
「あなたは、この死人の首の指のあとに覚えがありますか。あなたは小松の首を絞めたのですか」
三千子は一寸の間躊躇していたが、やがて不審相な様子で答えた。
「いいえ。私、そんなこと致しません」
「本当に?」
「エエ」
明智はそれを聞くとにわかに快活になった。彼は例によって、ニコニコしながら、盛んに長い頭髪をかき廻した。