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いっすんぼうし
一寸法師
江戸川 乱歩
「東京朝日新聞」朝日新聞社、1926(大正15)年12月8日~1927(昭和2)年2月20日<br>「大阪朝日新聞」朝日新聞社、1926(大正15)年12月8日~1927(昭和2)年2月21日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 96,475 字 · 194 页
その数々の罪がどんなに残虐を極めていたかは、いずれ御話する機会もあるでしょう。今はこの事件に関係した部分だけを申上げます。彼はあの朝ゴミにまみれた小松の死体を蕗屋君から受取ったのですが、その日の夜になって死体を人目につかぬ場所へ隠そうとして、ゴミの中から抱き上げた時、偶然にも小松が息をふき返したのです。彼女は全く死に切ってはいなかったのでしょう。不具者は一時は驚きましたけれど、次の瞬間には彼の持前の残虐性が頭をもたげました。彼は凡ての満足な人間を呪っていたのです。それに、小松が今蘇っては、山野氏から金を引出すことも出来ず、夫人を脅迫する手段もない。そこで彼は折角生返った娘を再び絞め殺したというのです。そして腕や足丈けを方々へさらしものにして、山野氏と夫人とを別々の意味で怖がらせた。それは一つは畸形児の戦慄すべき犯罪露出慾をも満足させました。だが顔丈けはさらしものに出来ない。それをすれば夫人が真相を悟ってしまう。そこで顔と胴体の隠し場所を探して、キューピイ人形といううまいものを見つけたのです。死に際の告白ですから、まさか嘘ではありますまい」
紋三はその時の異常な光景を、長い間忘れることが出来なかった。