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いっすんぼうし
一寸法師
江戸川 乱歩
「東京朝日新聞」朝日新聞社、1926(大正15)年12月8日~1927(昭和2)年2月20日<br>「大阪朝日新聞」朝日新聞社、1926(大正15)年12月8日~1927(昭和2)年2月21日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 96,475 字 · 194 页
それに窓の外の地面には、丁度雨のあとで柔かくなっていましたけれど、別に足痕もないのでございます」
「もっともお嬢さんが窓から出られるはずもありませんね。……、その前晩には何か変ったことでもなかったのですか」
「これということもございませんでした。よいの内はピアノなど鳴している様でございましたが、九時頃私が見廻りました時には、もうよく寐入っておりました。それに、丁度私の見廻ります少し前に、主人が店から帰りまして、三千子の部屋のすぐ下の書斎で、長い間調べ物をしていたのでございますから、三千子が部屋から降りて来るとか、何者かが忍び込むとかすれば、主人が気のつかないはずはございません。そして、主人がやすみます時分には、もう召使なども寝てしまいますし、すっかり戸締りが出来て、抜け出す道はなくなっていたのでございます」
「妙ですね。まさかお嬢さんが消えてしまわれた訳でもありますまい。きっとどこかに手抜かりがあったのですよ」
「でも、戸締りの方はもう間違いないのでございますが。警察でも色々調べて下すったのですけれど、刑事さんなんかも、どうも不思議だとおっしゃるばかりでございますの」