轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
いっすんぼうし
一寸法師
江戸川 乱歩
「東京朝日新聞」朝日新聞社、1926(大正15)年12月8日~1927(昭和2)年2月20日<br>「大阪朝日新聞」朝日新聞社、1926(大正15)年12月8日~1927(昭和2)年2月21日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 96,475 字 · 194 页
山野夫人は、もう度胸をきめてしまったという風で、青ざめてはいたが、案外平気で男のあとに従った。
男は自動車の運転手にさえ、彼の隠れ家を知らせまいとして、態と三町も手前で車を降りた。小間使のお雪がその車の番号を覚えて居た所で、こんなに用心深い相手には何の役にも立たなかった。だが、幸いなことには、山野夫人の身辺には、明智やお雪の外に、もう一人の人物が絶えずつきまとっていた。彼は正義だとか好奇心だとかよりも、もっと熱烈なある動機から、寸時も夫人の監視を怠らなかった。
不思議な男と山野夫人とが自動車を降りて、暗い町に姿が消えたころ、運転手と並んで運転台に腰かけていた助手が、借り物の派手なオーバを脱いで、一枚の紙幣と一緒に運転手に渡しながらいった。
「ヤ、有難う。じゃこれは少しだけれど、お礼の印だから。助手の人にもよろしくいって下さい」
助手にばけて運転台に腰かけていたのは、外ならぬ小林紋三だった。彼は本物の助手から借りていたオーバを脱ぐと、その下に例の一張羅の空色の春外套を着ていた。
彼は自動車を降りて、半町ばかり先を歩いて行く男女のあとを、用心深く尾行した。