轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
いっすんぼうし
一寸法師
江戸川 乱歩
「東京朝日新聞」朝日新聞社、1926(大正15)年12月8日~1927(昭和2)年2月20日<br>「大阪朝日新聞」朝日新聞社、1926(大正15)年12月8日~1927(昭和2)年2月21日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 96,475 字 · 194 页
この世のことは何もかもあきらめ果てていた。それが、何の因果か百合枝さん、あなたのことだけはあきらめてもあきらめても、あきらめ切れなんだ。一層あなたを刺殺して自分も死のうと思ったことが幾度あるか知れない。山野のところへ嫁入した時などは、本当に短刀を懐中に入れて、あなたに逢いに行ったことさえある。己はそれ程思いつめていたのだ。少しは不便に思ってくれてもいいだろう」
途切れ途切れの切ない声だった。それが一こという度に、闇の中を、はう様に百合枝の方へ近寄って来た。事実声の主は少しずつ、少しずつ、彼女の方へにじり寄って来るらしく、黒いもののうごめく気勢が、段々身近に感じられた。
百合枝は変な気持だった。ただ怖いのではなくて、何かこう不気味な獣に襲われている様な、妙なすごさだった。それに不思議なことには、相手の告白を聞いている内に、その蛇の様な執念に、ある魅力を感じ出していた。それは憐みの情というよりも、もっと肉体的な一種の懐しさであった。
突然柔かいものが彼女の膝をはい廻って、逃げる暇も与えず、つと彼女の手を握った。冷く汗ばんだ男の掌が感じられた。
「アラ」