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いっぽんのつりざお
一本の釣りざお
小川 未明
「読売新聞」1921(大正10)年4月30日、5月2日~4日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,272 字 · 5 页
一
一
あるさびしい海岸に、二人の漁師が住んでいました。二人とも貧しい生活をしていましたから、町や都に住んでいる人々のように、美しい着物をきたり、うまいものをたくさん食べたり、また、ぜいたくな暮らしなどをすることは、思いもよらないことでありました。
二人は、どうかして、もっといい暮らしをしたいものだと思いましたけれど、どうすることもできなかったのです。青い海の面を見つめながら、二人は、そのような幸福になれる日のことばかり考えていました。
「いくら考えたってしかたがないことだ。俺たちは働くより途がないのだ。」と、乙は甲を悟し、自分を勇気づけるようにいいました。
「それはそうだが、このうえ俺たちは働くこともできないじゃないか。」と、甲は、ため息をしながら答えた。
ほんとうに、二人は、雨の降る日も、また風が吹いて、少々波が高いような日でも、船に乗って沖に出て、網を打ったり、魚を釣ったりしたのであります。
なにごとも二人は、たがいに助け合いました。そして、たいていはいっしょに働いていたのであります。けれど、人間の運というものは、まことに不思議なものでありました。