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いっぽんのぎんのはり
一本の銀の針
小川 未明
「少年倶楽部」1927(昭和2)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,687 字 · 10 页
だんだん沖へ、沖へ出ると、そこはものすごい景色でありました。白い波は、いままで自分たちばかりの遊び狂うところだと思っていたのに、真っ白な帆をかけた船が、中へ割り込んできたものだから、びっくりしました。
「この世界は、おれたちの世界だ。それだのに、おれたちよりもっと白い大きなものが、頭の上を平気で踏んでゆくとはけしからん。」といって、波は騒ぎたてました。
いくら波が騒いでも、昔、海の王さまといわれた、おじいさんの孫の乗っている船は平気でありました。波の上を越して、もっと沖へ、沖へとこいでゆきました。
「あちらの島に着いて、金色の卵、夜になるとおもしろい唄をうたう貝を拾ってきて、妹への土産にしよう。自分がこの航海を無事に終えたら、もうりっぱな船乗りだ。いつか、海の王さまの後継ぎだという評判がたつであろう。」と、若者は、そう思わずにいられなかったのです。
波は、いくら騒いでも、どうすることもできませんでした。そのとき、空を風が通りかかった。波は、日ごろはあまり仲はよくなかったけれど、こんなときは味方になってもらおうと思いましたから、風を呼び止めて、
「あんな小さい船のぶんざいで、私たちの世界をかってに乗りまわすなんて生意気じゃありませんか。