轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

ひとすじのなわ

一条の縄

宮本 百合子

「宮本百合子全集 第二十九巻」新日本出版社、1981(昭和56)年12月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,201 字 · 11 页

青空文庫

「ああ俺は幸福だった。

彼は溜息を吐いた。

そして、彼那に愛しながら、此の唐突な別れをした今になっては、余り明かに浮んで来ない雌鴨のあの小さかった頭、眼、細かった頸を思い出して居たのである。

其の薫わしい、若々しい追想は、少なからず彼の心を柔らげた。

「ああ、俺は運が好かったのだ。

さっきまで、彼の様に自分に深い恵みを垂れて居た神様は、此れから先も、決して自分には辛くばかりは御あたりなさるまいと云う事を、段々彼は感じ始めた。彼の可愛い雌鴨も、自分が又幸福な日に会うまでは、生きてどこかに自分を覚えて居るだろうと云う事は、空だのみではない様に思えたのである。

彼はもういくらもがいても無駄な事であるのを知って居る。

駄目だと知りつつ苦しさをいよいよつのらせるほかしない身もがきをするでもない。

彼は、右の片足をしっかり捕えて居る繩の条じ目を、ぼんやり痛く感じながら、静かに目を瞑って仰向きになって居るのである。

斯うして居るうちに、夜は百年昔と同じに、彼の幸福であったきのうの朝が明けた通りに、段々明るんで来た。

四辺の万物は体の薄黒色から次第次第に各々の色を取りもどして来、山の端があかるみ、人家の間から鶏共が勢よく「時」