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いっせんどうか
一銭銅貨
小川 未明
「週刊朝日 23巻17号」1933(昭和8)年4月2日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,098 字 · 5 页
英ちゃんは、お姉さんから、お古の財布をもらいました。そして、お母さんから、小遣いをいただくと、その中にいれておきましたが、じきに、つかってしまうので、その財布の中は、いつもからっぽでありました。
ある日、英ちゃんが、その財布を、ばたばたやっていると、お姉さんがごらんになって、
「英ちゃんの、財布の中は、いつもからっぽなのね。」と、笑いながらおっしゃいました。
「からっぽなもんか、そら、ごらんよ。はいっているだろう。」と、英ちゃんは、お金をつまんで見せました。
「たった、一銭きりしかないの?」
「姉さんは、この銅貨が、いつできたと思ってるの。そりゃ、古いんだから。」
「そうね、大きいから、大正か、明治にちがいないわ。」
「明治九年なんだぜ。まだ、うちのお父さんもお母さんも、生まれない前のだよ。その時分から、日本じゅうをぐるぐるまわっていたんだ。そう思って、僕、大事にしているのさ。」と、英ちゃんは、いまのから見ると、大形な、そして、手ずれのした、一銭銅貨を裏表を返しながら、さもなつかしそうにながめていました。
「まあ、そんなに、古いの。」と、お姉さんも、手にとって、ながめました。