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さんのじりょこうかい
三の字旅行会
大阪 圭吉
「新青年」1939(昭和14)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,658 字 · 19 页
なんしろ、あんたの毎日のお客様を、それとなく拝見しているに、どうも、時間といい、客車といい、切符といい、荷札といい、どれもこれも三の字にひどく関係の深い御婦人達のように思われてね。これには何か、面白い因縁咄がおあンなさるんじゃねえかと、ついその、物好き根性が頭をあげて、お聞きしたいんですよ」
男は、前より一層困ったような顔をして、しばらく黙ったまま立っていたが、やがて、思い切ったように小声で切り出した。
「実は、お察しの通りですよ。私は、三の字旅行会というのに使われている、ま、一種の案内人といったような者ですがね。なんしろ雇人ですから、深いことは知りませんが、お察しの通り私のお客様には、その三の字旅行会という会との間に、一風変った因縁咄があるんですよ」
「ほほう。そいつア是非とも、お差支なかったら、伺いたいものですね」
伝さんは思わず乗り出した。だがこの時、三時の急行列車が烈しい排気を吐き散らしながら、ホームへ滑り込んで来ると、
「じゃあ又この次お話しいたしましょう」
男は云い残して、いつものように三等車の三輛目へ乗り込み、今日はいつもより一段と美しい、年の頃二十八、九の淑やかな婦人のお供をして、大きなカバンを提げながら、改札口のほうへ向って、神妙に婦人のあとから地下道の階段をおりて行った。