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さんにんのそうせいじ

三人の双生児

海野 十三

「新青年」1934(昭和9)年9、10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 43,806 字 · 87 页

青空文庫

妾は気味のわるいほど実に自分によく似た静枝と、いろいろ故郷の話や、幼いときの話をした。彼女は妾の知っていることは残らず知っていて、すべてはよく符合した。妾を見習ってカンカンに赤い三つのリボンをかけたこともよく覚えているそうであるし、紫の立葵のこと及びその色ちがいのもので赤や白のものがあることや、日本全国到る処に棲息するサワ蟹のこと、特にその鋏に大小の差があって鋏に糸をつけるとすぐそれがげることなどをスラスラ語った。

「静枝さん、あなたはどうしてあの座敷牢のようなところに入って暮していたんですの」

と妾はかねて聞きたく思っていたことを聞いてみた。

「それはこうなのでございますわ。あたくしはどうしたものか、極く小さいときから夢遊病を患っていたのでございます。それで夜中に起きてどこかへ行ってしまうようなことがあってはと、いつも座敷牢の中に入れられていたのでございますわ」

「でもいつでも貴女は寝てばかりいて、起きてたところを見たことがないわ。昼間から寝てばかりいたのは何故ですの」

「あれはこうなのでございます。あたくしは或る夜、夢遊して外に出たんですの。そして不幸にも崖から川の中へ落ちて足を挫き、腕を折り、ひどい怪我をしたことがあるので、それで立ち上れなくて、いつも寝ていました」