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さんじゅうねんごのせかい

三十年後の世界

海野 十三

「少年読売」1948(昭和23)年3~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 68,140 字 · 137 页

青空文庫

もちろん用心のために持っているが、それは装甲車の中が、気密になっているからである。

装甲車は、みんなで十台あった。一台をのこして、九台が出かけるように命令されている。正吉少年が乗りこんだ装甲車は、一号車であった。いよいよ出かけるときになって、隊長マルモ・ケン氏が乗りこんだ。この一号車長は、カンノ博士だった。

「出発」

号令と共に、空気服を着ている艇員が、三重戸の一つを、電気の力であけた。空気がもれないように、戸のあわせ目が複雑な構造になっていた。一号車は中へ進む。すると次の戸があった。

一の戸が閉まる。二の戸が開く。

一号車は、またその中へはいる。すると三の戸につきあたりそうになった。

その三の戸も、開かれた。その外は、まぶしい月世界の風景があった。

一号車は、音もなく、外へゆらゆらと出て行く。そのあとに三の戸が閉った。

一つの装甲車が外に出るまでに、このようなことが数回くりかえされる。

「どうだね、正吉君。月の世界は、あまり気持のいいところじゃなかろう」

カンノ博士は正吉にいった。

正吉は小窓から外を熱心にながめていたが、

「墓場に日があたっているような風景ですね」