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さんしろう

三四郎

夏目 漱石

三四郎在火车上遇见一位肤色黝黑的女子,不由自主想起故乡的恋人。他假装睡着偷听她和邻座老人聊天,越听越放不下。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 169,765 字 · 343 页

青空文庫

顔を洗って膳に向かった時、女はにこりと笑って、「ゆうべは蚤は出ませんでしたか」と聞いた。三四郎は「ええ、ありがとう、おかげさまで」というようなことをまじめに答えながら、下を向いて、お猪口の葡萄豆をしきりに突っつきだした。

勘定をして宿を出て、停車場へ着いた時、女ははじめて関西線で四日市の方へ行くのだということを三四郎に話した。三四郎の汽車はまもなく来た。時間のつごうで女は少し待ち合わせることとなった。改札場のきわまで送って来た女は、

「いろいろごやっかいになりまして、……ではごきげんよう」と丁寧にお辞儀をした。三四郎は鞄と傘を片手に持ったまま、あいた手で例の古帽子を取って、ただ一言、

「さよなら」と言った。女はその顔をじっとながめていた、が、やがておちついた調子で、

「あなたはよっぽど度胸のないかたですね」と言って、にやりと笑った。三四郎はプラットフォームの上へはじき出されたような心持ちがした。車の中へはいったら両方の耳がいっそうほてりだした。しばらくはじっと小さくなっていた。やがて車掌の鳴らす口笛が長い列車の果から果まで響き渡った。列車は動きだす。三四郎はそっと窓から首を出した。