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さんがつのだいよんにちよう
三月の第四日曜
宮本 百合子
「日本評論」1940(昭和15)年4月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,826 字 · 42 页
「おや、洗濯か。サイちゃんはまめで、見てても気持がいいや。――若いもんはいいねえ」
薄赤い、むっちりした手が水の滴をたらしながら襦袢をしぼり上げるところを見ていたが、引込んだと思うと、
「ちょいと、すまないけど、これもついでにザブザブとやっといて下さいな」
焼杉の水穿きをつっかけて、自分の水色格子の、割烹着をもって来た。
「ここへおきますからね、すまないねえ」
サイがどうとも云わないうちに、素早く、シャボン水の流れている三和土へじかにおいて縁側の方へ行ってしまった。
しんから舌うちしたいところをやっと耐えて、サイは唇をかんだ。何て気にくわないやり方をする婆さんだろう。まともに物を頼むということを知らないで。姉さんと呼んでいるここのかみさんのトミヨがサイの母親の血つづきで、上京したのも、その連れ合いが高島屋の裁縫をひとてでやっているというお針屋の口を世話してくれたからであった。ところが家のなかのことや、サイのほかに四人おいている下宿人の世話は連れ合いのおふくろであるこの婆さんが一切とりしきっていた。トミヨは子供にかまけて、合間に賃仕事をするのが精一杯のように、まとまっては物も言わなかった。