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さんがつのだいよんにちよう

三月の第四日曜

宮本 百合子

「日本評論」1940(昭和15)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,826 字 · 42 页

青空文庫

二重の赤い糸を二重に針にからめながら、こんな布地ではじき糸のたまだけのこるようになってしまうのじゃないかと思われた。そんなになったときの千人針を考えると滑稽のようだし可哀想でもある。それでも頼むひとの本気の顔は、やっぱり純綿のときと変らないのであった。

勤めさきの仕事に使う紙もこの頃はやかましくなって、元のように割合簡単にすてることを許さなくなった。隅へ番号を入れた紙を原図の上へピンでとめていると、便所からかえって来たてる子が目を大きくしてよって来た。

「ちょっと、赤紙よ」

息をつめた囁き声なのに、弾かれたようにまわりの顔がいくつかこちらに向いた。

「隣りの室にも来た人があるらしいわよ」

忽ち室じゅうにその気分が伝わったが、その動揺を反撥するようなもう一つの気分もあって、みんなは格別それ以上喋りもしないで仕事をつづけた。

空をふるわせて鳴るサイレンの響の下にある町ぐるみ、ここへ通う者の一家で出来ているかと思われるような土地柄であったから、サイが来てからばかりでも、臨時の若い男や世帯もちのおっさんなど、随分たくさん出た。その度にここでも女がふえて来た。