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さんがつのだいよんにちよう

三月の第四日曜

宮本 百合子

「日本評論」1940(昭和15)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,826 字 · 42 页

青空文庫

ここの土地に住んでこそいるが、国は遠く東北や山陰の地方にあるというような娘がふえて来た。故郷では一家から二人出ているという娘もいる。この頃は、女十五人に男一人の割だとさ。東京がそうなのか、日本がならしてそうなったのか。それも、赤坊からお婆さんまでの女をひっくるめてのことなのかどうかは分らなかったが、働いている娘たちの耳の底にそんな言葉は澱んでしみこんで、何かの感じとなっているのであった。

赤紙のことがみんなの気をはなれて暫くしたとき、伍長の飛田が入って来た。一つ一つの図板をゆっくり見まわってから、窓を背にして立って、

「ちょっと、そのままの位置で手だけ止めて」

いつものような口調で命じた。顔がすっかり自分に向って揃うのを待って、飛田は軽い咳ばらいのようなことをすると、

「一つ報告しなければならないことが出来ました。実は只今――」

あらっ、というような声がしたような気がして、図板のまわりを漣のような動揺が走った。それを、自分の声でおし鎮めるようにしながら飛田がつづけた。

「実は只今、光栄ある召集令をいただきました。兼々待望の好機でありますから、全力をつくして本分をつくしたいと思いますが、皆さんとは養成の時代からの浅からぬお馴染みであります。