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さぶろうじい
三郎爺
宮本 百合子
「東京日日新聞」1918(大正7)1月5日~17日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 24,866 字 · 50 页
彼は、「旦那様、この俺が引受けました」と云って帰るとすぐ、自分の手の及ぶかぎり、腕こきのものを集めた。
そして、先ずこれならばと思うものが揃うと、今度は彼が先棒となって、泥運びもすれば胴突きの繩も引張る。
大きな体を泥だらけにして、出来上って見なければ、何がどうなるのか分らない彼一流の方法で、小気味よくグングンと仕事を運んで行った。
煙草休みは一時間と定め、土方達が舌を巻くような激しい働き方をしながら、彼は我ながら自分の腕前に、「感歎措く能わず」というような心持になったりしたのである。
彼が御秘蔵のちょん髷を切ったのもこのときである。
汗に塗れ泥に塗れ、おまけに「おがっ屑」まで浴るちょん髷は、一日経つとまるでもう髷だか芥の塊だか見分けのつかないようにきたなくなってしまう。
あんまり汚れがひどいので、さすがの彼もとうとう断念して、散切(ざんぎ)り頭になったのである。
散切りになった三郎爺は、「いきがよく抜けて好い気持だ」と、急にさっぱりした頭を珍しがりながら朝から晩まで、土鼠のようになって稼いだ。
ちょっとでも気を緩めれば、土方などというものは骨惜みをする。