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さぶろうじい
三郎爺
宮本 百合子
「東京日日新聞」1918(大正7)1月5日~17日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 24,866 字 · 50 页
内心、ますます得意になりながら「山沢家の大久保彦左」の自信を強めるに過ぎなかったのである。
泥まみれの「大久保彦左」は、家の出来て来るのが楽しみなのはもちろんであるが、足りなくなった材木を巧くやりくったり、わずかの職人を上手に動かしたりして、山沢さんに、よくしてくれたなと云われるのが、何より嬉しかった。
仕事の方は、彼奴に聞けと云われると、彼はほくほくせずにはいられない。
来合わせた客の前などで、これがよくしてくれるからというようなことを一言云われると、彼は大きな眼を細くし、頸をすくめながら、溶けそうに、ニコニコしたりしたのである。
十
晩飯を済ませて、わずか一二時間、山沢さんのところへ行って賞められるのを楽しみに、金鎚と指金(さしがね)を握った彼は、仕事場中を見まわりながら、裏板の張り方でもぞんざいなことは許さない。
ちょっとでも手を抜きそうにしようものなら、破(わ)れ鐘のような声で、恐縮させる。大工の嘆(こぼ)すのも無理がないと思われるほど、彼の監督は厳しかった。
それで、きっと、大工共が内々諜(しめ)し合わせでもしたのだろう。