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さぶろうじい

三郎爺

宮本 百合子

「東京日日新聞」1918(大正7)1月5日~17日号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 24,866 字 · 50 页

青空文庫

さ、行け、来てもらうにゃあ当らねえ。何ぼちょん髷爺でも、山沢の旦那様に、何もかも委された俺あ、貴様みてえな生若けえ小僧っこにばかさって堪るものけえ!」

と、啖呵(たんか)をきった。

そして途方もなく大きな拳を振りまわしながら、一息に彼のいわゆる「ぼいこくってしまった」のを見た他の者は、思わず顔を見合わせて、長大息をした……。

一度ならずこのようなことを繰返しながら、とにかく仕事はだんだん捗(はか)どった。

そして、翌年の花盛りに新築祝いが催されたとき、彼は紬(つむぎ)の紋附を着、お下りを貰った山沢さんの仙台平をはいて、皆の前で彼の言葉でいう「感状」と幾何かの賞金を貰った。

それがよほど嬉しかったものとみえて旦那様にお目にかけるのだと云いながら、庭に拡げた毛氈の上で、彼は赤い手拭をかぶって、後にも先にもたった一度の蛸(たこ)踊りを踊った。

かようにして、山沢さんの達者だった時分には、彼も働きがいのある、面白い月日を送っていた。

けれども、新築へ引移ってから間もなく、若い頃から無理を重ねて来た山沢さんの体にはそろそろとひびが入り始めた。

重いリョーマチで、足が思うように動かなくなったのがもとで、おいおい中風のようになって行った。