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「したじき」のもんだい

「下じき」の問題

宮本 百合子

こんにちの文学への疑い

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,838 字 · 20 页

青空文庫

でさえも、この作家の最良の収穫たらしめなかった。モーパッサンが、「脂肪の塊」と「女の一生」「水の上」の他の何で文学史の上に立っているだろう。自身のロマネスクなるものの源泉を、フランスの社交小説において、こんにち語ることのできる三島由紀夫も、おそらくは戦時下の早熟な少年期を、「抵抗」の必然のなかったころのフランス文学に、それが、どれほど歴史の頁からずれつつあるかを知らずに棲んだのだろう。

ソヴェト同盟の文学が、一九三三年ごろからはロシア語とともに「危険」「要監視」となって、椎名麟三が、ドストイェフスキーにばかり親しまなければならなかった、ということも、あながち、自身の気質によりかかったとばかりは云えまい。椎名麟三も、日本へ帰りはじめている。

ひとくちに、戦後の文学、戦後の作家とよばれている現代文学の素質に、このように日本独特な精神の国内亡命が、因子となって作用している事実は、見のがされてはならない点である。

第二次大戦、ファシズムの惨禍を、日本の戦時的日常の現実を、通じて生死しながら、精神では大戦前のレジスタンスを知らないフランス文学に国内亡命をしていた人々の矛盾は、おそらくその人々に自覚されているよりも激しく、こんにち日本の文学に国内亡命をしていた人々の矛盾は、おそらくその人々に自覚されているよりも激しく