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ふざいじぬし
不在地主
小林 多喜二
一~十一、十六「中央公論」1929(昭和4)年11月号、十二~十五(「戦い」の表題で。)「戦記」1929(昭和4)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 69,990 字 · 141 页
何処でも小作争議が起りそうだんだ。――それで何処かで、皮切りでもされれば大変だ。んだから、外の地主も俺達のば何んとかして、うやむやにしてしまいたいので調停委員の後さこっそりついてるんだとよ。
小作官などは「この事件を無いことにしてくれれば、岸野さんからお前等に慰労金を出させてもいいんだが、――社会のためにも、その方がいいんだ」と云ったものだ。
聞いたか?――みんなグルだ。
もう残ったものは俺達ばかりよ。――こうなったら、皆! 意気地なく黙って首ば縊るか? もう一日だって食えねえんだからな。それに岸野は腕ずくでも取ってみせるッてるんだ。――それとも死にたくなかったら、最後までやるか?――もう、このどっちかに来ているんだ。どっちかだ。
んで、どっちだ!
――伴は自分でも泣いていた。
次に組合の荒川が「争議団」を組織して、即刻戦闘の準備をしなければならないことを、皆に話した。「鉄は赤いうちに!」
寒い雨が降っていた。――もう冬が近い。そしてそれが知らない間に氷雨になっていた。さすがの(実際、さすがの、と健には思われた。)小作人もありありと興奮の色を顔に出していた。