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ふざいじぬし
不在地主
小林 多喜二
一~十一、十六「中央公論」1929(昭和4)年11月号、十二~十五(「戦い」の表題で。)「戦記」1929(昭和4)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 69,990 字 · 141 页
」
誰かがワザと大きくあくびをした。
「健ちゃは兵隊どうだべな。」
「ん、行かねかも知らねな。……んでも、万一な。」
「その身体だら行かねべ。青訓さなんて来なくたってええよ。」
すると今迄黙っていた武田が口を入れた。――「徴兵の期間ば短くするために青訓さ行ぐんだら、大間違いだど!」
初まった、と思うと、七之助はおかしかった。
「あれはな、兵隊さ行ぐものばかりが色々な訓練を受けて、んでないものは安閑としてるべ、それじゃ駄目だッてんで、あれば作ったんだ。兵隊でないものでも、一つの団体規律の訓練をうける必要はあるんだからな。」
「所で、現時の農村青年は軽チョウ浮ハクにして、か!……」
七之助が小便しながら、ひやかした。叢の葉に、今迄堪えていたような小便が、勢よくバジャバジャと当る音がした。
「ん。」――武田が真面目にうなずいた。
恐らく、どんな労働者よりも朝早くから、腰を折りまげて働いている百姓が、都会の場末に巣喰っている朝鮮人よりも惨めな生活をしている。それでも農村の青年は「軽チョウ浮ハク」だろうか。――これ以上働かして、それでどうしようというのだ。――健は、出鱈目を云うな、と思った。