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ふざいじぬし
不在地主
小林 多喜二
一~十一、十六「中央公論」1929(昭和4)年11月号、十二~十五(「戦い」の表題で。)「戦記」1929(昭和4)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 69,990 字 · 141 页
んだべ!」――由三が急に大きな声を出した。
「ん。」
「んだべ、なア!」――独り合点して、「勝ところの芳な、犬ばつれて山利さ遊びに行ったら、とオても怒られたど。」
「そうよ。――勿体ない!」
「山利の母な、お父ば可哀相だって、眼ば真赤にして泣いてたど。」
「んだべ、んだべ、可哀相に!」
「な、兄ちゃ、狐……」――瞬間、炉の火がパチパチッと勢いよくハネ飛んだ。それが由三の小さいひょうたん形のチンポへ飛んだ。
「熱ッ、熱ッ、熱ッ※(感嘆符二つ、1-8-75)……」
由三はいきなり絵本を投げ飛ばすと、後へひっくりかえって、着物の前をバタバタとほろった。泣き声を出した。「熱ッ、熱ッ※(感嘆符二つ、1-8-75)」
「ホラ、見れ! そったらもの向けてるから、火の神様に罰が当ったんだ。馬鹿!」
姉のお恵が、物差しで自分の背中をかきながら、――「その端なくなってしまえば、ええんだ。」と、ひやかした。
「ええッ、糞ッ! 姉の白首!」
ベソをかきながら、由三が喰ってかかった。聞いたことのない悪態口に、皆思わず由三をみた。
母親がいきなり、由三の小さい固い頭を、平手でバチバチなぐりつけた。