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ふざいじぬし
不在地主
小林 多喜二
一~十一、十六「中央公論」1929(昭和4)年11月号、十二~十五(「戦い」の表題で。)「戦記」1929(昭和4)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 69,990 字 · 141 页
「兄ちゃ、由この頃どこから覚べえて来るか、こったら事ばかり云うんだど!」
お恵は背中に物差しをさしたままの恰好で、フイに顔色をかえた。それが見る見るこわばって行った。
と、お恵は、いきなり、由三を物差しで殴りつけた。ギリギリと歯をかみながら、ものも云わずに。物差しがその度に、風を切って、鳴った。――そして、それから自分で、ワアッ! と泣き出してしまった……
明日は三時半頃から田へ出て、他の人より遅れている一番草を刈り上げてしまわなければならない。――健は、然し、眠れなかった。表を誰かペチャペチャと足音をさして、通って行った。健は起き上った。ランプの消えた暗い土間を、足先きで探りながら、台所へ下りて行った。水甕から、手しゃくで、ゴクリゴクリのどをならしながら、水を飲んだ。厩小屋から、尻毛でピシリピシリ馬が身体を打っている音が聞えた。
夜着をかぶると、間もなく、ねじのゆるんだ、狂った柱時計が、間を置きながら、ゆっくり七つ打った。
二
「S相互扶助会」発会式
正面の一段と高いところには「天皇陛下」の写真がかかっていた。
「修養倶楽部」の壁には、その外「乃木大将」