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ふざいじぬし
不在地主
小林 多喜二
一~十一、十六「中央公論」1929(昭和4)年11月号、十二~十五(「戦い」の表題で。)「戦記」1929(昭和4)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 69,990 字 · 141 页
日が暮れそうになって、ようやく口笛を吹きながら、棒切れで道端の草を薙ぎ倒し、薙ぎ倒し、村道を村に帰ってきた……。
通りを三町程行くと、道をはさんで荒物屋、郵便局、床屋、農具店、種物屋、文具店などが二、三十軒並んでいる「市街地」に出る。――由三は坊主頭と両肩をジュクジュクに雨に濡らしたまま走った。
軒下に子供が三、四人集って、「ドンドン」をやっていた。由三はランプの台を持ったまま側へ寄って行った。
┌「ドンドン、ドン!」
└「ドンドン、ドン!」
「中佐か?――勝ったど! 少将だも。」
相手は舌で上唇を嘗めながら、「糞!」と云った。
┌「ドンドン――ドン!」
└「ドンドン、アッ一寸待ってけれ。」――何か思って、クルリと後向きになると、自分の札の順を直した。
┌「ドンドンドン!」
└「ドンドンドン!」
「中将!」
「元帥だ!――どうだ!」いきなり手と足を万歳させた。
「あ、お前、中将取られたのか?……」――側の者が負けたものの手元をのぞき込んだ。「あと何んと何に持ってる?」
「黙ってれでえ!……負けるもんか。」
「お、由、組さ入らねえか?」――勝った方が云った。
「入れでやるど、ええべよ。