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ふしょうのあに

不肖の兄

豊島 与志雄

「改造」1925(大正14)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,889 字 · 39 页

青空文庫

「一体その話はどの辺まで進んでるんです。」

「どの辺までって、ただ、加藤さんからそういう話があっただけなんですよ。そして、わたしも兄さんも、浜地さんならよかろうと思ってるんですがね……。」

「そして、敏子はどうなんです。」

「承知のようですよ。」

「浜地は。」

「勿論承知でしょうよ。浜地さんの家から加藤さんへお話があったらしいんですから。」

「それじゃ文句はないじゃありませんか。本人同士がよければ、何にも云うことはない。僕も賛成です。何でしょう、もう浜地と敏とは愛し合ってるんでしょうね。」

「ええ……。」

おや、と僕は思った。母は何か知ってるんだな、というより、何かあったんだな、そう僕は母の様子から感じた。変に言葉尻を濁して、僕の顔色を窺ってるのだ。僕は少しうっかりしてたかも知れない。然し、浜地は僕の親友であり、お前は僕の妹であるが、そのお前達二人の間を監視するほど、僕の頭は暇じゃなかった。僕はただお前達二人が仲のよいことだけを知って喜んでいた。或は愛し合うようなことになるかも知れないと、ふと思ってみたこともあるにはあるが、結婚なんてことは僕の考えの範囲外だった。