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よのなかのために
世の中のために
小川 未明
「少国民の友」1947(昭和22)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,184 字 · 9 页
こう、友だちがいうのを聞いたとき、僕は、おぼえず、
「あっ、思い出した!」と、心で叫んだのです。
いつの晩だったか、床の中で考えながら、重大なことに思って、目をさまして起きたときは、なんであったか忘れてしまって、それから、なんとなく、大きな落とし物をしたように、ゆううつだったのが、友だちの話から、思い出したのでした。
「もし自分が、あの佐倉宗吾だったら。」と、空想したことでした。あの悲惨きわまる運命にあわなければならぬと想像したのです。
いつの世にも、正しく生きようとすれば、ひとり佐倉宗吾とかぎらないから。
やがて、友だちは帰りました。
僕は、祖父が、ひとりへやの内で、たいくつそうにしていられるので、そばへいって、
「おじいさん、どうして、世の中には、まちがったことが多いでしょうね。」と、たずねました。
おじいさんは、いつものごとくゆったりとした調子で、
「まちがっているって、どんなことかな。」と、おっしゃいました。
「そうでしょう。正しいことをしながら苦しめられ、悪いことをしても、楽な暮らしをしている人があるのは、どうしたわけですか。」
「なに、正しいものは、いつかみとめられるし、正しくないものは、しまいに罰せられるのじゃ。